はじめに
皆様は家庭でドライフードを自作されたことがあるでしょうか。
ドライフードは、保存性が高く、旨味が凝縮され、食材ロス削減にもつながる便利な調理法です。
フードドライヤーの普及やオーブンの低温調理機能の進化により、果物のおやつ、野菜の保存食、ペットのおやつなどを自宅で簡単に作れるようになりました。
しかし、乾燥は単に“水分を飛ばすだけ”ではありません。
微生物の増殖、酵素反応、細胞構造、糖度など、食品科学の知識を理解しておくと、ドライフード作成の失敗が大幅に減り、仕上がりの質も安定します。
この記事では、家庭でドライフードを作る前に知っておきたい基礎知識を、科学的な視点からわかりやすく解説します。
ドライフードとは何か
ドライフードの定義
ドライフードとは、食材から水分を減らし、微生物が利用できる“自由水”を減らすことで保存性を高めた食品のことです。
水分が減ることで腐敗しにくくなり、常温保存も可能になるといったメリットがあります。
主な乾燥方法
● 自然乾燥(天日干し)
風味が良く、昔ながらの方法ですが、天候や湿度に左右されます。
● オーブン乾燥
家庭で最も手軽な方法です。低温設定ができれば多くの食材に対応できます。
● フードドライヤー【おすすめ!】
温度と風が一定に保たれるため、乾燥ムラが少なく、仕上がりが安定します。
● 凍結乾燥(フリーズドライ)
家庭では難しい方法。
食品を凍らせて水分を氷にした後、真空状態にして昇華(固体から直接気体へ変化)させることで乾燥させる仕組みです。
乾燥の科学|乾燥のメリット
食品を乾燥させるメリットとして代表的なものに、「保存性の向上」と「栄養価と旨味の濃縮」が挙げられます。
水分活性(Aw)とは
まずドライフードのしくみを理解するにあたり、重要になってくる「水分活性(Water Activity)」について説明します。
水分活性とは、食品中に含まれる水分うち、微生物の繁殖や化学反応に利用される「自由水」の割合を0〜1の数値で表した指標のことです。
- Aw 0.90以上:多くの細菌が増殖
- Aw 0.70以下:カビや酵母も増殖しにくい
- Aw 0.60以下:ほとんどの微生物が活動(増殖)できない
乾燥によって水分活性が下がると、細菌などの微生物は増殖できなくなります。

ドライフードの作成ではAw 0.6〜0.7を目標に乾燥させます
メリット1:保存性の向上について
微生物は活動するために水を必要とします。
乾燥によって自由水が減ると、微生物は増殖できず、その結果食品の腐敗が進みにくくなり、保存性が向上します。
メリット2:栄養価と旨味の濃縮について
乾燥によって水分が抜けると、糖・アミノ酸・有機酸などの成分が相対的に濃縮され、栄養価、および旨味が凝縮されます。
果物が甘く感じられるのはこのためです。
食材によって乾燥しやすさが異なる理由
乾燥しやすい食材の特徴
一般的に水分が抜けやすい食材(細胞の構造が均一であるもの)は、乾燥がスムーズです。
例えば以下のような食材はスムーズに乾燥させることが可能です。
- りんご
- にんじん
- 玉ねぎ
- トマト(薄切り)
乾燥に時間がかかる食材の特徴
以下例のように、「糖度が高い」、「粘性がある」、「繊維が密な食材」などは乾燥に時間がかかります。
- バナナ
- 柿
- かぼちゃ

「糖度が高い=水分が保持されやすい(糖は水と結合しやすい)」ため、乾燥に時間がかかります
【注意】肉・魚の乾燥について
家庭でドライフードを作成するにあたり、肉や魚などの生ものについては特に注意が必要です。
微生物が増殖しやすい
肉や魚は、野菜や果物と比べて微生物リスクが高い食材です。
表面だけでなく内部にも菌が存在し、低温で長時間放置すると増殖しやすくなるため、食材を放置しないなど、微生物を増殖させない工夫が必要です。
安全に作るための温度管理
家庭で肉・魚のジャーキーを作る場合は、70℃以上の加熱処理を組み合わせることが推奨されています。
乾燥中の温度が低すぎると、微生物が活動できる環境になってしまいます。
家庭でジャーキーを作る際の注意点
- 下処理で塩分や酸を加えると安全性が高まる
⇒塩分による脱水作用や酸によるpH低下により、微生物の増殖が抑えられる - 乾燥前に加熱しておくとリスクが減る
⇒加熱によって微生物を滅菌、減菌させる - 完全に乾燥させた後も冷蔵・冷凍保存が基本になる
⇒一般的に微生物が増殖しやすい温度帯(10〜60℃)を避けることができる
乾燥後の保存方法
ここからはドライフード作成後の保存について解説します。
保存の基本ルール
- 完全に冷ましてから密閉する
⇒結露による微生物の増殖を防ぐ - 湿気を避ける(乾燥剤を入れると安心)
⇒水分活性(Aw)上昇による微生物の増殖を防ぐ。カビ発生の原因になることも。 - 肉・魚は冷蔵または冷凍が必須
⇒水分活性(Aw)が下がり切っておらず、常温では微生物が増殖する恐れがある
食材別の保存期間の目安
- 果物:冷蔵で1〜2週間
- 野菜:密閉+乾燥剤で1〜2ヶ月
- 肉・魚:冷蔵で1週間、冷凍で1ヶ月程度

あくまで目安になります。適切に保存し、なるべく早く使い切りましょう。
ドライフードの作り方 3方式の比較
最後に改めて家庭でできるドライフード作成の手段、およびそれぞれのメリット・デメリットを比較し解説します。
全体比較表
| 方法 | メリット | デメリット | 向いている食材 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 自然乾燥 (天日干し) | ・電気代ゼロでエコ ・大量に干せる ・太陽光で旨味が濃縮 ・設備がほぼ不要 | ・天候に左右される ・乾燥に時間がかかる ・虫・ホコリのリスクあり ・カビが生えやすい ・肉・魚は衛生面で不向き | ・野菜 ・果物 ・魚(干物) | ・コストを抑えたい人 ・昔ながらの干し方を楽しみたい人 |
| フードドライヤー(低温乾燥) | ・温度が一定で失敗しにくい ・栄養保持率が高い(低温乾燥) ・衛生的で虫の心配なし ・乾燥ムラが少ない ・無添加ドライフードが作れる | ・電気代がかかる ・本体の初期投資が必要 ・匂いがこもる場合あり ・トレイ入れ替えが必要な機種もある | ほぼすべての食材 | ・無添加フードを安定して作りたい人 ・ペットフード作りをしたい人 |
| オーブン乾燥 (高温乾燥) | ・短時間で乾燥できる ・家庭のオーブンでOK ・殺菌効果が高い ・カリッと仕上がる | ・高温で栄養が壊れやすい ・焦げやすい ・乾燥ムラが出やすい ・低温設定がない機種も多い ・肉は中が生焼けになることも | ・肉・魚 ・根菜類 ・水分の少ない野菜 | ・時短で作りたい人 ・新しい機材を増やしたくない人 |
次にそれぞれの方法について、細かく解説していきます。
自然乾燥(天日干し)
メリット
- 電気代ゼロで最もエコ
- 大量に干せる(ザルやネットで広範囲に)
- 太陽光による旨味の濃縮(干物の美味しさの理由)
- 設備がほとんど不要
デメリット
- 天候に依存する(湿度が高いと乾かない)
- 乾燥に時間がかかる(1〜3日以上必要)
- 虫・ホコリ・鳥などのリスクがある
- カビが生えやすい(水分活性が下がる前に微生物が増える)
- 肉・魚は衛生面で不向き
向いている食材
- 野菜(大根、しいたけ、トマトなど)
- 果物(柿、梅など)
- 魚(干物)
フードドライヤー(低温乾燥)
メリット
- 温度が一定で失敗しにくい
→ 水分活性(Aw)を確実に下げられる - 栄養保持率が高い
→ 40〜60℃の低温乾燥はビタミン類の損失が少ない - 衛生的(虫・ホコリの心配なし)
- 乾燥ムラが少ない
- 無添加ドライフードが作れる
- ペットフード作りに最適(肉・魚も安全に乾燥)
デメリット
- 電気代がかかる(数時間〜十数時間動作させる必要あり)
- 本体の初期投資が必要(5,000〜20,000円)
- 匂いがこもる場合がある
- トレイの入れ替えが必要な機種もある
向いている食材
- 肉・魚(ペット用ジャーキー)
- 野菜・果物
- ハーブ類
オーブン乾燥(高温乾燥)
メリット
- 短時間で乾燥できる(1〜3時間)
- 殺菌効果が高い(高温処理)
- 表面がカリッと仕上がる
デメリット
- 高温で栄養が壊れやすい(ビタミンC・B群など)
- 焦げやすい(特に果物)
- 乾燥ムラが出やすい
- 低温設定(50〜60℃)がないオーブンも多い
- 食材によっては、表面だけ乾いて中が生焼けになることもある(肉など)
向いている食材
- 肉・魚(短時間で仕上げたい場合)
- 根菜類(さつまいも、にんじん)
- 水分の少ない野菜
比較まとめ
- 自然乾燥
→ コストゼロ・旨味アップ・ただし衛生リスクと天候依存 - フードドライヤー
→ 栄養保持・無添加・安定品質・ペットフード向きだがコストが高め - オーブン乾燥
→ 時短・殺菌効果・ただし栄養損失と焦げに注意

個人的にはフードドライヤーを用いた低温乾燥をおすすめします!
まとめ|仕組みを知ると失敗が減る
ドライフード作りは、食品科学の理解があると成功率が大きく上がります。
水分活性、細胞構造、糖度、微生物の性質などを知ることで、どんな食材でも応用でき、仕上がりを安定させることができます。
後半記事では、実際の作り方・切り方・温度・時間・保存方法を、詳しく紹介し、実際に我が家のフードドライヤーでドライフードを作った際の流れを解説していきます!
それでは後半の記事をお楽しみに!
ここまで見てくださってありがとうございました!
参考文献・出典一覧
食品科学・水分活性(Aw)・微生物制御
- 農研機構(NARO)|食品の水分活性と保存性
※食品の腐敗・微生物増殖とAwの関係を解説する公的研究機関の資料 - 国立医薬品食品衛生研究所|微生物の増殖条件
※食品衛生・保存性の科学的根拠
食品乾燥技術(熱風乾燥・低温乾燥・フリーズドライ)
農林水産省|食品加工・保存技術に関する情報
※食品乾燥の基礎知識
栄養成分・乾燥による変化
- 文部科学省|食品成分データベース
※乾燥前後の栄養比較に使える一次情報
食品保存・安全性
- 厚生労働省|食品衛生と保存方法
※保存性向上(乾燥・塩分・糖分)の科学的背景に利用 - 農林水産省|食品の保存と安全に関するガイド
※家庭での保存方法の信頼性を補強
ペットフード(ドライフード)の基礎情報
- ペットフード協会|ペットフードの種類・製造工程
※ドライフードの一般的な製造プロセスの裏付け - 農林水産省|ペットフード安全法
※法的基準・安全性の根拠として最適


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