道路の凍結防止剤の科学:冬の安全を支える“白い粒”の正体とは(解説編)

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アイキャッチ_凍結防止剤 その他

年明けから寒さが徐々に厳しくなり、私の住んでいる地域でもしばしば雪が積もるようになりました。
ある日家族で雪道をドライブしているときに、子供から「なんで道路には雪が積もっていないの?」と質問されました。

私自身、深い知識を持っていなかったので、子供と一緒に調べてみました。
そこで分かったのが「凍結防止剤」という重要な存在。
この薬剤が“化学の力”で私たちの安全を守っていることを知りました。

この記事では、調べてみて明らかとなった凍結防止剤の仕組みや種類成分)、融雪剤との違い、そして環境への影響までを化学的にわかりやすく解説します。

凍結防止剤とは何か

凍結防止剤とは、文字通り道路の凍結を防ぐために散布される薬剤のことです。
雪が降る前や気温が下がる前に撒くことで、路面が凍りにくくなり、スリップ事故を防ぐことにつながります。

科学的な仕組み:なぜ凍結防止剤をまくと凍結を防ぐことができるのか

凍結防止剤が働く鍵は、凝固点降下(ぎょうこてんこうか)という現象です。

凝固点降下とは?

純粋な水は0℃で凍ります。
温度が下がると水の分子同士が繋がり合い、結果として水は氷になります。
ところが水以外のもの(凍結防止剤の成分等)が混ざっていると、それらの分子が水の分子の隙間に入りこみ、水分子の繋がりを阻害するため、氷になりにくくなります。
その結果、凍結防止剤などが溶けた水は0℃よりも低い温度まで凍らなくなります。

水(液体)が氷(固体)になるイメージ図。
【図】 水(液体)が氷(固体)になるイメージ
凝固点降下のイメージ図
【図】凍結防止剤を使い、凝固点降下が発生するイメージ
凍結防止剤の成分が、水分子同士のつながりを阻害するため、水が氷になりにくくなります。

車道用凍結防止剤の種類と特徴

凍結防止剤として主に使われている成分とその特徴をまとめました。
それぞれメリット・デメリットがあるため、用途に合わせて使い分けられています。

成分主な用途・特徴メリットデメリット
塩化ナトリウム(NaCl)最も一般的
道路・歩道・駐車場など広範囲に使用される
・安価で大量供給が容易
・凍結防止効果が安定(−10〜−20℃)
・金属腐食
・植物・土壌への塩害
・−20℃以下では効果が低下
塩化カルシウム(CaCl2即効性が高く、寒冷地や緊急対応に使用される・凝固点を大きく下げる(−50℃程度)
・吸湿性が高く速効性あり
強い発熱効果もある
・強い腐食性
・コンクリート劣化の可能性
塩化マグネシウム(MgCl2環境負荷が比較的低く、都市部や植栽周辺で使用される・塩害が少ない
・凍結防止効果は−30℃程度まで
・コストが高め
・吸湿性があり保管に注意
きゃみパパ
きゃみパパ

上記以外にも、「酢酸カリウム」や「尿素」が使用される場合もあります。

3種の凍結防止剤を比較

上記で紹介した3種類の凍結防止剤について、効果・費用・環境負荷の3軸で不等号(>)を使って比較すると、次のような関係になります。

効果(凝固点降下能力・即効性)

塩化カルシウム > 塩化マグネシウム > 塩化ナトリウム

  • CaCl₂:最も強力(−50℃付近まで対応)
  • MgCl₂:中程度(−30℃付近まで)
  • NaCl:一般的(−10〜−20℃)
費用(安い → 高い)

塩化ナトリウム < 塩化カルシウム < 塩化マグネシウム

  • NaCl:圧倒的に安価
  • CaCl₂:やや高い
  • MgCl₂:最も高価(地域差も大きい)
環境負荷(大きい → 小さい)

塩化ナトリウム > 塩化カルシウム > 塩化マグネシウム

  • NaCl:塩害・金属腐食が大きい
  • CaCl₂:腐食性は強いが、NaClより環境負荷はやや小さい
  • MgCl₂:比較的環境負荷が低い(ただしゼロではない)

凍結防止剤と融雪剤の違い

似た言葉に「融雪剤」がありますが、目的が異なります。

種類主な目的使うタイミング
凍結防止剤凍らせないための予防雪が降る前・凍る前
融雪剤すでにある雪や氷を溶かす積雪後・凍結後

成分はほぼ同じですが、目的と散布タイミングが違うのがポイントです。

道路に使われる薬剤の種類を調べる方法

「自分の地域ではどの凍結防止剤が使われているのか?」と気になりますよね。
実は、自治体によって公開状況が異なり、調べられる場合と調べにくい場合があるのが現状です。
ただし、いくつかの方法を押さえておくと、かなりの確率で情報にたどり着けます。

自治体の道路管理課・土木管理課に問い合わせる

一番確実な方法です。
「通常どの凍結防止剤を使用していますか」と聞けば、担当者が教えてくれることが多いです。
担当課は「道路管理課」「土木課」の場合が多いです。

自治体の公式サイトを見る

「冬期道路管理」「凍結防止剤」などのページに、使用薬剤が記載されている場合があります。

例として大阪の茨木市のホームページを記載します。
下期リンクの記事内に、利用されている凍結剤の成分記載(塩化カルシウム)がありました。

茨木市HP(路面凍結に注意してください)

入札情報から確認する

自治体の「入札・調達情報」に「凍結防止剤購入」「融雪剤購入」といった案件が掲載されていることがあり、そこに品名が書かれています。

地域によって使う薬剤が異なるため、調べてみると意外な発見があります。

例として大阪府の入札公告を記載します。一般の方でも各種入札結果の参照は可能です。

大阪府入札公告
大阪府、令和7年度における凍結防止剤の入札公告情報抜粋

調べにくいケース

自治体によっては、以下のような理由から凍結防止剤の種類を明示していないこともあります。

  • 年度ごとに調達先が変わる
  • 気象条件で使い分ける
  • 詳細を公開する必要がない

環境への影響:便利さの裏にある課題

凍結防止剤は安全のために欠かせませんが、環境への影響も無視できません。
植物や車などの金属、ペットのお散歩など、様々なものに影響がある為、注意が必要です。

植物への塩害

塩分が土壌に蓄積すると、以下のように植物に悪影響が及びます。

  • 植物が水を吸いにくくなる
  • 根が傷む

道路脇の植生が枯れやすいのはこのためです。

車や橋の金属腐食

塩分は金属を錆びさせるため、
車の下回りや橋梁の寿命に影響することがあります。

雪国の車が錆びやすい。と言われるのは、凍結防止剤(融雪剤)が影響しています。

ペットの健康被害

凍結防止剤は、ペットの肉球に付着すると炎症やただれ(皮膚炎)を引き起こすほか、舐めると嘔吐や下痢などの中毒症状の原因となり、冬の散歩に深刻な影響を与えます。
特に、雪が溶けて地面に溜まった薬剤は見た目で分かりにくいため、冬場は十分な注意が必要です。

散歩後は足の洗浄や保護が必須で、可能であれば犬用ブーツを着用してお散歩することをおすすめします。

対策も進んでいる

  • 散布量を最適化する技術⇒必要最低限の利用に留める。
  • 環境負荷の低い塩化マグネシウムの使用
  • 砂や砕石との併用⇒物理的な滑り止め効果がある
きゃみパパ
きゃみパパ

「安全」と「環境」のバランスをとることが、今後は重要ですね。

まとめ:冬の道路を支えるのは、身近な化学

凍結防止剤は、冬の道路の安全を守るために欠かせない存在です。
その仕組みは「凝固点降下」というシンプルな化学現象に基づいており、私たちの生活にも馴染みのある成分の薬剤が役に立っています。

一方で、環境への影響という課題もあり、より良い使い方を模索する取り組みが進んでいます。

次回の<実験編>では、家庭でできる“氷が溶ける科学”の実験を紹介します。
実際に凍結防止剤に利用されている成分を用いて、凝固点降下の効果を検証していきます。
実際に目で見て体験することで、今回の内容がさらに深く理解できます。ぜひ結果をご覧ください。

参考ページ(凍結防止剤・融雪剤の科学と道路管理)

国土交通省(道路管理・冬期道路対策)

NEXCO(高速道路会社)による冬期道路管理の解説

科学的な仕組み(融点降下・塩類の性質)

環境への影響(塩害・水質・植生)

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